社会や暮らしにおいてデザインはとても大切。
同じものでも、デザインひとつで、
その魅力や使い勝手、人の気持ちも大きく変わります。
デザインというと目に見える何か形のあるものを思い浮かべますが、
デザインには目に見えるものだけではなく、
目に見えないデザインというものもあります。
それは、モノを作ったり、サービスを設計したりする上での、
理念やプロセス、設計思想といった分野です。
この目に見えないデザインは、目に見えるデザインの良し悪しを左右する、
とても大事な部分です。
さて、日本では、
デザインは、大事とは言われながらも常に二の次にされてきたのが現実です。
日本製品の信頼性への評価は高い一方で、
そのデザインや機能については魅力的でないものが少なくありません。
街の景観はその最たるところです。
日本を代表するの観光都市、京都でさえ、
なかなか景観整備が進まないのが現状です。
京都を訪れた海外からの旅行者から、
京都の街は醜くて失望したと聞いたことがありますが、
私も京都に住んでいたことがありますが、
確かにそこは、観光客に胸をはって紹介できる街並みではありません。
海外からの観光客を増やしたいなら、
もっと、足元の景観、デザインを見直さなければなりません。
日本において、デザインの力がこれまで充分に活かされてこなかったことには、二つの大きな理由があると私は思っています。
一つは、デザイン感覚を育てる子供の時からの教育の不足。
その為に、大人になってもデザインに対する意識と理解とが低いことから、様々な分野においてデザインへの取り組みが二の次に回されてしまいます。
二つ目は、市場や市民のニーズをくみ取り、そのニーズを実現するためにデザインをどのように活かしたら良いかを理解し、プランニングから実現までの様々な諸要素を調整しながら、それを世に送り出すことのできるプロデューサー的な人材が少なかったことです。
新たな可能性を切り開くためには、
そういったデザインに対する教育やデザインを活かす能力の開発は、これからの時代には、なくてはならないものだと思います。
20年近く前のことですが、
私自信、そのことを痛切に感じ、
デザインを社会に活かすために何か手伝えないかと、
デザインコンサルティングの仕事に携わっていた時があります。
当時、気鋭のデザイナーの方々とチームを組んで、
集合住宅や土地開発などのデザインプロジェクトを行っていました。
そこには、建築家の内藤廣さんや芦原太郎さん、横河建さん。
造園家であり、近年は“生き方”に関する著書が、
次々にベストセラーとなっている枡野俊明さん。
照明設計では、当時まだスタートしたての照明デザイン事務所LPA。
ここは後に六本木ヒルズの照明などを手掛けた事務所です。
そして、私が今やっている会社の共同経営者もしていただいている、
環境建築プランナー/インテリアデザイナーの
小原淳さんなども参加しておられました。
意匠建築に詳しい方ならお分かり頂けると思いますが、
今振り返るとドリームチームです。
当時、その中心として活躍されていたのが船曳鴻紅さんという方で、
早くから社会におけるデザインの重要性に気づき、
1990年代に五反田に東京デザインセンターを設立。
以来、デザイン、意匠建築の分野を中心に、
その情報発信や、デザイン業界を支援する活動をされてきました。
あのGOOD DESIGN賞の審査員も長年務めてこられ、
また、日本デザインコンサルタント協会の事務局長もされてこられました。
この協会には、このブログでも時々ご紹介する、
ジャパンライフデザインシステムズの谷口正和さんや、
企業のCIの草分けである中西元男さんら、
蒼々たるプロデューサーが名前を連ねていて、
そういった方々が執筆するここの会報誌は、なかなか勉強になります。
このようにデザイン、意匠建築の分野で、
そのキーマンとして活動されてきた船曳さんですが、
デザインの重要性を広く認知してもらい、
産業や国の施策にもデザインの力をもっと活かしていくためには、
国政のレベルにもその声を届けなければならないということで、
実は、今回の参議院選挙に出馬されることとなりました。
詳しくはこちらをご覧ください。
https://cocodesign.jp/
デザイナーの浅葉克己さんが選挙ポスターをデザイン。
出馬は、みんなの党の比例代表からです。
先日お会いした時に、なぜみんなの党なのかとお伺いしたところ、
一番大事なのは、デザインの重要性を国政のレベルに届けることであって、
縁あって、みんなの党の浅尾慶一郎さんに繋がり、
ここから出馬することになったと伺いました。
浅尾さんというと、以前にこのブログでもちょっと触れましたが、
私自身、政治家の中で人物として、最も信頼している一人です。
もし、ご関心のある方は、こちらの著作もどうぞ。
ジャパンライフデザインシステムズ
デザインブックス
ところで、政治の話は別として、
船曳さんの東京デザインセンターはなかなか面白いところです。
雑然とした五反田と、高級住宅地の白金台との境にあり、
ちょっとストイックな表玄関とは反対に、
人工的とはいえ、内部や裏側は、
都会とは思えない素敵な空間が広がります。
様々なインテリアのショップが並ぶほか、
デザインや建築に関連する様々なイベントが開催されています。
ここのレストラン、カフェはお薦めです。
もっとお薦めなのが、1階にあるデザインブックス。
デザイン、建築に関連する、
国内、海外の様々な本が集められています。
私はかつて、そこの店長さんから、
「もしかしたら、この本、ご興味あるのではないかと思ってとっておきました」と、
一冊の本を紹介されました。
それがジム・ヴァンダーリンとスチュワート・コーワンの、
「エコロジカルデザイン」という本。
環境デザインの最も基本的な考え方が書かれている、
世界的なバイブル的書籍です。
今においても、この本を凌ぐものは見たことがありません。
その本のリファレンスに紹介されていたのがシューマッハカレッジでした。
実は私が東京デザインセンターや船曳さんを通じて得た様々な経験や人との出会いは、その後の私の人生を大きく変えていきました。
まさにそれは人生のリ・デザインでした。
船曳さんには、是非とも、日本を美しく暮らしよく変えるリ・デザインを推進する力になっていただけたらと思います。
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