(邦訳:中村運 甲南大学教授、英語版は左サイドバーをご覧ください))
欧米で出版から10年たっても、
なお売れているロングセラーの一冊。
著者は理論生物学者のブライアン・グドウィン。
若かりしころから、
構想主義生物学の旗手としてその先頭に立ち、
その後、複雑系の考え方を重視した研究にむかい、
サンタフェ研究所の外部アドバイザーを勤め、
米国のスチュワート・カウフマンらと、
いくつもの共同研究を行ったりしています。
利己的の遺伝子の考え方で知られる、
リチャード・ドーキンスとは、
オックスフォードで同じ門下生でありながら、
彼とは正反対の考え方をとり、
機械論のドーキンスに対して、
全体論のグッドウィンとして、
何度も科学誌上などで対局しています。
また、妹弟子ともいえるメイワンホー教授とともに、
遺伝子操作の危険性について、
その理論的なバックボーンを支えている一人です。
グドウィン博士のことについては、
私の留学記のなかの、
「フランケンシュタインの末裔」
でも少し触れていますので、
ご興味ある方はご参照ください。
「DNAだけで生命は解けない」は、
当時のグッドウィンの研究の最新情報として、
全体論の考え方から、複雑系の基礎、
複雑系の考え方を用いた研究から、
それまでの生物界の常識を越えた、
様々なことが発見されたことなど、
目から鱗の、とても貴重な情報が詰まっています。
しかし、日本では、
残念ながら、この本は絶版になり、
中古でしか手に入らなくなりました。
これからの世界観を先取りした本なのに、
惜しいことです。
日本は、これでまた世界の先端から、
一歩遅れをとることになってしまいます。
この本を出版した、
シュプリンガーフェアラーク社は、
新しい視野での研究や考え方をしている著作を、
積極的に出版しているところで、
とても貴重な内容の本も少なくありません。
たとえは、デビッド・コーテンの、
「グローバル経済という怪物」
「ポスト大企業の世界」
いずれも、今の世界的大転換の時に、
貴重な提言を含んだ、
いま、多くの人に読んでもらいたい著作です。
この出版社、ちょっと目の離せない存在です。
流行や、一般的な考え方になびくことなく、
今は亜流でも、近い将来に主流となるものを、
目ざとく見つける才能があるようです。
話は変わりますが、機械論、全体論といえば、
あの日本の資本主義の父といわれる渋沢栄一の、
お孫さんにあたる渋沢 健さん。
少し前に、竜河さんから、素敵な考え方の人がいるからと、
お話をいただいたことがありました。
この日経の記事では、その機械論、全体論を、
経済に当てはめ、考えを発展させていらっしゃいます。
確かに素敵な思想をお持ちの方のようです。
渋沢さんも、そろそろ機械論には終止符をうち、
全体論を重視していくべきという点で、
私と同じ方向のベクトルを持っているようです。
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