お金の本質



丁度10年前に書いた、私の学位論文からの引用です。
当時、担当教授をはじめ、学内でも、ランチ時の話題になった一節となりました。

Basically, money should come into existence when an exchange of goods or services occurs. Owing to the invention of money, we have obtained freedom of exchange in time, location and variety of exchange. This might be the nature of money. But during this age of capitalism, getting money became the main aim of a business and individual work. In this sense, local currency movements are trying to realize the real meaning of money.

基本的にお金というものは、商品の交換やサービスが行われるときに現れるべきものです。人類は、お金の発明によって、交換にまつわる時間的な束縛や、場所的な制約、交換対象の種類の制限を超えた、交換の自由さを獲得することができました。これこそ、お金の本質と考えられるのではないでしょうか。しかし、資本主義の時代になって、お金は、お金を獲得することがビジネスや個人の仕事の目的となってしまいました。それに対して、地域通貨は、お金の本来の意味を実現しようとしているのです。

いまの私たちのお金は、歴史の変遷と人類の意識の変化の中で、
物質的な特徴を帯び、そして人々の欲望の対象となってしまいました。
人類が本当に幸せな社会を求めるなら、
お金そのものの性質を、根本的に捕らえなおし、
その物質性を消していく必要があります。

ここで書かれている地域通貨は、通帳型通貨を意味しています。
通帳型通貨は、物質的な性質を持たずに、単に交換の足跡を記録するのみです。
通帳には財を売ったり、サービスをして通貨を得たら、プラスで記入、
何かを買ったり、サービスをしてもらったりしたらマイナスで記入します。

ここに、通常の貨幣の定義としてある「貯蓄性」と言う概念は存在しません。
また、参加者全体の金額を合わせるとゼロになるはずなので、
残高がマイナスになることはごく自然な現象です。
まさに、私たちが呼吸をして、空気を吐いている状態と言えます。
空気を吐けば、また吸えばよいのです。
通帳型通貨では、残高がゼロになっても、マイナスになっても、
相互に信頼があれば財やサービスの交換が継続できます。
つまり、「お金が無い」という状態はありえないのです。
そこに既存の通貨とは決定的な違いがあります。

通帳型通貨が信頼を維持する唯一の条件は、
取引内容を完全にオープンにし、誰もが目に出来る「見える化」です。
やましいことをしていなければ、特に問題はないでしょうが、
どうしても自分の取引内容や預金残高を隠したい人がいれば、
当面の間、既存の物質的な通貨を残しておけばよいと思います。

高齢者や働けない人たちへの対応や、
どこでも使えるようにする技術的な対応。
また、プラスが一部の人々に偏らないようにするための、
ゲゼル的なマイナス金利を取り入れるなどのルールづくりなど、
いくつかの仕組みを組み合わせる必要がありますが、
この通帳型通貨は、将来、間違いなく取り入れられる制度となるはずです。

そしてその先で、人々のお互いの信頼が当たり前のようになってくれば、
通帳型通貨は、「お金」としてではなく、財やサービスの流れを把握するだけの、単なる「トレース(痕跡)」としての存在になっていき、
まさに、お金が水や空気のような存在になる時代に、
私たちは足を踏み入れていくのだと思います。

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