スモール・イズ・ビューティフルで知られる、
経済学者シューマッハは、
「全てのものには、適切なサイズがある」と、
その著書に残しています。
会社組織などの場合、
お互いの顔が分からない程度の規模では、
お互いの意思疎通もないし、
現場と管理者との距離が離れ、
意思決定と現場との間にギャップが生じてしまいます。
そうなると、企業運営の上でも、
環境の変化への対応や、
しっかりした自己管理に支障を生じます。
会社組織であれば、
ヒューマンスケールであること。
それが、働く人や健全な会社運営のために、
大事であることを、
シューマッハは述べています。
そういったことに気づいて、
一つの企業形態のモデルを作ったのが、
京セラです。
そのアメーバ経営といわれる手法は、
会社の中を、数名から、
多くても20名程度の小ユニットに区切り、
それぞれが、
あたかも小さな会社のように機能するようにしています。
これは、単に小さく区切るだけではなく、
会計上も明確に区分できるように、
工夫されたアメーバ会計を利用します。
そうすることで、末端の社員であっても、
自分が行っている仕事の収支がわかり、
社長と同じように、
経営的に物事を考えることができるのです。
わたしも、そのアメーバ経営を、
取り入れた会社にいたことがありますが、
非常によく考えられたシステムと、
感心した覚えがあります。
この会社は、
自律的に社員がコストを管理し、
新たな展開を行っていく原動力を、
組織のしくみによって、
自然に生み出していくところが、
なかなかすごいです。
いま、京セラの以外でも、
かなりの数の中小企業、中堅企業が、
このアメーバ経営を取り入れています。
京セラと同じように、
独自に小ユニット経営の方法を編み出したのが、
東京の前川製作所。
まさにホロン構造ともいえる、
独特な組織形態を作り出し、
会社組織の研究者の間では有名な会社です。
この社長の話では、
昔は普通の会社でしたが、
社員の考え方を変え、
ここまで変化させるのに10年かかったそうです。
さらに、一歩進んで、
実務上の社長のいない、
社員の総意で意思決定している会社が、
メガネ21。
テレビや雑誌で一時期よく紹介されていたので、
ご存知の方も多いと思います。
何か決めるときは、
社内のインターネットで皆に問いかけます。
返事がない場合は賛成であるというルールのもと、
迅速な総意による意思決定を実現しています。
もちろん、書類上の社長はいらっしゃるそうですが、
何年かごとに持ち回りで行っているそうです。
メガネ21は、
今や、大手のチェーンといっても良いくらいに、
全国に出店し、急成長しました。
規模が大きくなって、
多少、階層的な構造も取り入れたと聞きますが、
根本のスタイルは変わっていないと思います。
こういった、
いわゆるヒューマンスケールの組織にすること、
また、中央集権でなく、
できるだけ現場の人が意思決定に参加できる、
組織にすることは、
いずれも、これからの企業にとって、
必須といえる課題だと思います。
しかしながら、生身の人間が働く現場で、
新たな試みをすることは、
余程のリーダーシップがないと、
なかなかできることではないと思います。
そういった意味では、
この分野の進歩は、
ゆっくりと進んでいくのでしょうか。
イギリスのNGOなど、
組織構造や運営の上で、
先駆的な試みを行っているところも多い様です。
少し、情報を集めて、
いずれご紹介したいと思います。
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