(ミネルヴァ書房)
著者の山下氏より、
このブログの昨年の11月10日の、
「大学の「知」のゆくえ」のコメント欄に、
上記の本が出ましたとご連絡いただきました。
どうもありがとうございました。
日本でオートポイエーシスというと、
20年以上前に一度、ブームがあったそうで、
その後は、徐々にブームも去り、
今は、極めてマイナーなものになってしまいました。
私が、10年前に和書検索したときには、
左のお奨め本の「知恵の木」以外は、
わずかに、河本さんの数冊があったのみで、
オートポイエーシスは、
日本では忘れられ、衰退していくのだろうと思い、
その後10年余り、和書の検索はしていませんでした。
ところが、山下さんから連絡を頂き、
久しぶりに調べてみると、
山下さんは2000年以降に何冊か、
オートポイエーシス関連の書籍を出されています。
オートポイエーシスを直訳すると、
「自己生成」或いは「自己組織化」。
地球生命系が、
単に“競争”によって進化したのではなく、
自と他との協調的な相互関係の中で、
共進化したということを、
最も端的に説明したものです。
環境やエコロジーについて考える上でも、
その基本は、とても大事であると私は思っています。
その基本的な原理を理解せずに、
環境やエコロジーを語ろうとすると、
それは、大方の場合、
あさっての方向を向いた、誤謬を含んだ、
逆効果のものになるでしょう。
従って、世の中の「環境」と名のつく、
大学やその学科においては、
まさに必修にすべき科目に他なりません。
著者の山下和也さんは、
京大哲学科のご出身で、
京都文教大学、福井大学で教鞭をとられているようです。
(後日追記:先生のお知り合いの方からご指摘いただきました。2011年より愛知大学で教えておられるそうです。2012年9月)
ところが、グーグルで検索すると、
富山大学にも同姓同名の先生がおられることに気づきました。
富山の山下和也先生は理系で、
専門はセルオートマトンの研究。
個が集まった組織体の中で、
お互いが多対多に相互影響することで、
個と全体がどのように変化するかを、
コンピュータシミュレーションなどを用いて調べる、
一種の複雑系の研究です。
オートポイエーシスとは、
似ているようで違いますが、
違うものではあるものの、
セルオートマトンこそ、
オートポイエーシスの基本の一部を、
目に見える形で表現できる、
唯一無二のツールでもあります。
私がシューマッハカレッジで行った、
協調組織の研究も、
オートポイエーシスの原理にヒントを得て、
セルオートマトンを応用してシミュレーションし、
協調の本質とその特性を調べたものです。
同姓同名のお二人の“山下和也”さんが、
こんなところで繋がるという奇妙な偶然に、
ちょっと無視できない縁を感じた新年でした。
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