日本航空とアメーバ経営

日本航空のトップに稲盛さんが就任することになりました。
新聞やテレビでは、
稲盛さんは事業再生の経験は豊富だけれども、
航空業界の経験は無いと報じられていますが、
それは間違いです。

実は、かつてベンチャー航空会社に出資し、
当時、最も信頼していた幹部を通じて、
その経営内容を常に注視されていました。
従って、航空業界の事情、事業構造はよくご存知なのです。

日航がもつ配下の関連会社のほとんどは、
京セラも同業種をもっています。
その経験のみならず、
そこが持つ様々なノウハウや資源も、
日本航空に活かせることができます。

その点で、稲盛さんが前原国土交通省大臣と、
地元が一緒で関係が深かった縁もあったものの、
日航再生のCEOとして就任されることは、
考えられる限り、最適な選択であると思います。

稲盛さんの助っ人として、同じく京セラから、
森田直行さんが参画されることになりました。
以前、仕事を通じて時々御世話になった懐かしい方です。

森田さんが社長をしている京セラの子会社は、
実は、上場しても良い規模の大きな会社で、
携帯電話のキャリアのバックボーンを担っていたり、
データセンターとして大手企業のホームページを預かっていたりと、
誰もが知らないうちに御世話になっている会社です。
また、アメーバ経営のコンサルティングを行う機関としても知られています。

森田氏の参画は、
日航にアメーバ経営を導入することが目的だと報道されていますが、
親方日の丸の企業にとってアメーバ経営は、
まさに、“結核にペニシリン”と同じような、
これ以上に無い特効薬です。

アメーバ経営を簡単に言うと、
職場を適度に小規模なグループにわけ、
あたかもそれが一つの小企業であるかのように、
収益とコストを緻密に管理できるようにする手法です。
そして、現場の一人ひとりに、
利益管理や自主的な改革意識を植え付け、
常に経営者の視点で、各部署で利益管理ができるようなしくみです。
通常、職場の倫理観、仕事への心構えを教育する、
通称“フィロソフィー”とペアで、
現場に移植していきます。

一つ一つの小さなグループ(アメーバ)は、
そのグループで利益管理をしますが、その結果は、
より大きな集合体である、
職場単位、工程単位、工場単位、事業単位に集積することができ、
最終的には、会社グループ全体として合算できます。
部門をまたがる共通経費を上手く配賦し、
月次決算ならぬ、週次決算で、
月曜日の朝には、全社の最新の収益状況が確認できる仕組みです。

京セラとその関連会社はもちろん、
あまり知られてはいませんが、
結構、多くの著名な会社もアメーバ経営を導入しています。

私は、ある程度の規模の不採算企業にとっては、
アメーバ経営を導入するメリットは大きいと考えています。
しかし、
健全な企業がアメーバ経営を用いる際には、
注意しなければならない点がいくつかあると思います。

私が思っている最大の欠点一つは、
各グループで収支を厳密に管理するがために、
利益だけに気持ちが行き過ぎ、
独創的で、飛躍するような商品やサービスが出にくくなる点にあります。

第二点は、各グループでの利益管理が、
どうしても利己的な行動へと駆り立ててしまうために、
グループ間での軋轢が多くなることです。
従って、グループとグループとを取り持つ、
リーダシップのある上位者が必ず必要となります。

第三点は、利益管理が徹底されればされるほど、
利益を無理して出そうとして、
不正に手を染める人が出てしまいやすい点があります。

先に、アメーバ経営は、
「通常、職場の倫理観を教育するフィロソフィーとペアで、
現場に移植していきます」と書きましたが、
これらの欠点を多少なり緩和するのが、
そのフィロソフィーであると言われています。

ところで、“アメーバ”経営という名前。
いまひとつなのが、ずーっと気になっていました。
もう少し、気の利いた名前だと、
もっと世の中に浸透していたかもしれません。

でも日航のおかげで、アメーバ経営も多少知られることになりそうです。
どのように日航が再生していくのか、
これからが楽しみです。

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