瓦理論 ~ こふく亭に思ふ

確かあれは10年以上前。
2000年「いのちの祭り」の準備会議の時だったと思います。
その会議のなかで、
安曇野のシャロムヒュッテの臼井さんが語って下さった「瓦理論」に、
私は2度驚きました。

まず驚いたのは、言葉ではなかなか表現しにくい自然界の摂理が、
実に見事に、わかり易く表現されていることでした。

屋根の瓦は、一枚一枚が絶妙にお互いに重なり合うことで、
屋根全体を余すことなく覆っています。
それは、自然界が、相互依存、相互関係によって出来上がっており、
しかも、自分自身の存在を大事にしながらも、
全体との協調も同時に行うという、
そのバランスを大事にしている摂理と、
その基本が重なり合うというのです。

瓦理論は、その瓦をモチーフに、
瓦が重なっていなかったら・・・、つまり、個がそれぞれに自分勝手にお互いに離れ離れの状態だったらどうだろうかとか、
仮に、縦に重なっていたら・・・、つまり、完全な縦型社会の状態だったら、個は尊重されるだろうかなどと、
様々なバリエーションを経ながら、
自然界の相互依存の摂理と人間の生き方暮らし方を、
実に見事に表現しているのです。

さらに驚いたのは、
瓦理論では、単独の部分が70%で、
重なる(協調の)部分が30%というのが、
丁度良いバランスだというくだりです。

実は、私が大学院で協調組織について研究していたときに、
そのコンピュータシミュレーションで、
組織が最も協調的かつ創造的であり、
さらには問題解決能力が高くなるといった結果が出たのが、
それぞれの個において、
自分自身を重視する割合が約70%で、
全体を重視する割合が約30%だった時だったのです。
私が海外まで行って苦労して導き出してきた数字が、
なんと、既に安曇野にあったわけです。

さて、今日、何故、瓦理論を持ち出したかと言うと、
実は、昨年にこのブログでも紹介した、
南アルプスのふもとにできた、
エネルギーや水を完全に自給自足して運営する、
マクロビオティックレストラン「こふく亭」が、
一年で閉店になったと発表されたからです。

とても美味しいレストランでしたし、
なかなか予約も取れないくらいに繁盛していました。
しかも、美しい里山と田園風景に囲まれた立地で、
地元でも高い評価のお店だっただけに残念です。

閉店の理由は明らかにされていないのですが、
私としては、予てから一つ気がかりだったことがありました。

それは、あまりに孤立した自給自足であったことでした。

自然界も、私たち人間も、
孤立しては決して生きていけません。
必ず、何らかの形で、お互いが支えあっています。
お互いが支えあうことで、
それが持続可能な、生命システムや社会を形成していけるのです。

仮に、そのお店が、もう少しゆるやかに、
瓦理論のように70%程度に自給自足をし、
30%は外部からの電力や水に頼ることができたなら、
もしかしたら閉店しなくてもすんだのかもしれないと、
私は推測するのです。

「こふく亭」の再開は、多くの人が願っているようです。
訪れた人の心に、必ず何か贈り物があったお店でした。
是非、何らかの形で再開して欲しいと切に願っています。

シャロムさんのHPに、瓦理論の一端が垣間見られる文章がありましたのでご紹介しておきます。
http://www.ultraman.gr.jp/perma/a8_4Pkawara__.pdf

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