進化する世界、後退する日本 ~ システム思考で見える日本経済の処方箋


アメリカや欧米の先進諸国の政策や制度改革を見ていると、
その端々から、
着実に、新しい社会にシフトしていっていることを感じることができます。

ところが日本だけが、
どこかあさっての方向を向いて進んでいくようで、
ましてや、今度の選挙で自民党が勝とうものなら、
逆戻りをするような感じさえします。

特に経済をどうするかについては、
私たちの生活がかかっているだけに、
本当に真剣勝負で取り組まなければなりません。

今日は、そのところを少し書いてみたいと思います。
少し長くなりますが、とても大事なことなので、
是非、お付き合いください。

複雑な連鎖が連なる経済の世界を分かりやすく解きほぐすには、
システム思考の手法は必須と思います。
何が何にどのように影響しているかを書き出して行き、
対象の中にある複雑な相互関係を明らかにして全体像をつかむやり方です。
既に一般的になりつつありますが、
私が専攻したホリスティックサイエンスでも重視されている方法論の一つです。

システム思考は図に書いて、その連鎖を表現すると分かりやすいのですが、
ブログなので、言葉でその連鎖図をなぞっていくことにしましょう。

過去20年~30年の間を象徴する最も重要な経済的変化というと、
先進諸国の経済が成熟期に入ったことと、
新興諸国の急速な経済発展が始まったことでしょう。

新興諸国での工業生産が活発となるにつれ、
そこで生産される安い商品が大量に先進諸国に流入してくるようになりました。

それは市場の商品価格の低下を引き起こし、
さらに先進諸国の国内生産の減少と、
それに伴う労働賃金の低下、工場の海外移転を引き起こしました。

工場の海外移転は、資本力があり、比較的生産性の高い規模の大きな企業から始まりました。
それは徐々に中小企業へと広がっていきました。
工場の海外移転とともに、国内においても工場の規模縮小や閉鎖から、
先進諸国の第二次産業における雇用は急速に減少していきました。

工場が減って、働く場の無くなった大量の労働者が、
第三次産業であるサービス産業に移っていきました。
労働力がダブついたサービス産業では、
賃金も低水準になっていきました。

賃金が低水準になると、
消費者は安いものを求めがちになります。
すると、ますます海外からの安い商品が求められるようになり、
新興諸国からの輸入が増え、さらに国内の製造業が衰退していきます。
製造業の雇用がさらに減少し、安い賃金のサービス業の人口が増え、
安い物しか買わなくなる・・・また、輸入が増え・・・、
といったいわゆる経済縮小のスパイラルが起こっていきました。

国内に残った工場においては、
余力のある工場はより生産性を高めていきますが、
生産性が高まるほど、従業員数も少なくて済むようになります。
コスト削減のために、
正規雇用の労働者の数が減少し非正規雇用の労働者を増やすことも行っていきました。
一方、改善余力の無い工場においては、
リストラを行い、残った労働者の賃金を下げていくしかありません。
そして、資金が底をついたところで廃業、倒産していきます。

こうやってシステム思考的に今の経済の問題をたどっていくと、
この20年間に起こった産業構造、世界経済の変化によって、
今起こっている問題は必然的に起こってきたことがよくわかります。
それと同時に、単なる金融政策や、
昔と違って今や一過性の効果しか生まない公共投資といった対症療法的な施策では、
根本的な解決は決してできないことも明らかになってきます。

では、本当の解決策はどこにあるのでしょうか。

既に、ますます多くの国民が経済的に後退しているいま、
できるだけ早い段階で、経済縮小のスパイラルを、
確実に断ち切らなければなりません。
そのためには、問題のできるだけ根幹をとなっている要因を改善する必要があります。
多分、それは過去60年続いた経済政策の逆をいく政策となるでしょう。

まず必要と思われるのは、
できるだけ生産性の高い雇用を増やすことです。
その為には、もちろん新産業の育成も行わなければなりませんが、それでは間に合いませんし、確実ではありません。

確実を期すためには、海外移転した工場を国内に呼び戻すことが一番です。
「ローカル化」、つまり国内生産国内消費、地産地消の推進です。
その為には、企業が海外より国内に工場を持ったほうが有利と判断する程度に、補助金、雇用支援金、工場用地の提供などの政策を打つことが必要です。
それを積極的に行うことで、
国内の雇用は確実に増え、経済の内部循環が促進されていきます。
GDPは拡大し、デフレからインフレに転換するはずです。

国内において循環型の経済が色濃くなるにつれて、
人々の暮らしも、経済も安定していくはずです。

ただ、それだけではうまくいきません。
もうひとつ、やらなければならないことは、
日本と新興諸国との内外格差が激しいと考えられるこの先30年くらいは、
国内の製造業が復活できるように、
海外からの輸入品に多少の抑制を促す制度を、
期間を設けて導入すべきと考えられます。
また、国内生産国内消費、地産地消の一大キャンペーンを行うべきでしょう。

尚、国内生産に切り替えると商品価格が上ってしまいます。
その対応策として、
製造業の雇用が増え、賃金が上昇するまでのあいだは、
低所得者向けの生活支援制度が必要となることは付け加えておかなければなりません。

この国内生産国内消費、地産地消の推進は、
これまでの主流な考え方だったグローバル化とは相容れません。
ですが、日本の製造業を復活させるには絶対に必要です。
これをしないと日本の出血は止まらず、ますます衰退していきます。

これは、決して輸入をシャットアウトするわけではありません。
例えば、海外において幹線道路から住宅地に入る道路に、
ハンプという凸型の舗装がしてあることがありますが、
それが、そこに住む住民のために車の速度を落とさせるのと同じように、
時限的な関税や総量規制により、海外からの安い輸入製品の流れを緩やかにするのです。

既にアメリカは4年前から、
海外に出た工場の国内回帰を薦め、
アメリカ製品を積極的に買うキャンペーンを行ってきました。
日本以上にしっかりと関税もとっています。

丁度、今日のニュースでFORBS誌の関連記事が出ていました。
いよいよIT産業においても国内回帰が始まったようです。
オバマ大統領は、問題の本質をしっかり掴んでおり、
私と同じ考えです。しかも、かなり本気です。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK11030_R11C12A2000000/?df=2&dg=1

これまでの“グローバル化”と“成長”をキーワードに拡大発展を目指した経済から、
“ローカル化”と適度な新陳代謝のある恒常的な“安定”とを実現する経済へと、
形を変え、お金の流れを変えなければ、
今の経済問題は決して解決しません。

今の日本でこのようなことを言うと、
“とんでも論”としてすぐに片付けられてしまいそうですが、
必ず、そう遠くない将来に、
社会の流れはこの方向に変わってくるはずです。

なぜかと言うと、
私たちが求めている、
持続可能で、皆が真に幸せを感じられる社会は、
この延長線にしか存在しえないことに、
徐々に人々が気付き始めるからです。

ちなみに、こういった政策を明確に前面に出している政党は、まだ残念ながらありません。
しかし、方向として近い考えを持った政党は、
共産党、社民党、日本未来の党です。

一方、正反対に、従来路線をつき進むことが問題の解決だと考えているのは、
民主党、みんなの党、日本維新の会です。
さらに、自民党、公明党、新党改革・・・と続きます。

このままでは、日本だけが世界から取り残されそうです。

何とかしなければなりません!

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